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遺言書作成の準備と遺言書の書き方

安曇野市・松本市・大町市・池田町・松川村で遺言書作成をお考えの方は
行政書士寺坂誠相続相談事務所

Ⅰ 遺言書作成のメリット

人が死んだとき、自分の財産は誰に引き継がれるのでしょうか。

もし、遺言が無く、人が死亡した場合、国が定めたルールで遺産の相続が行われることになります。これを法定相続と言います。

つまり、遺言が無い場合、自分の意志で、自分の財産を自分の指定した者に相続させることができません。

しかし、遺言書がある場合、国のルールではなく、自分の意志で遺産配分の指定をすることができます。

そのため、国のルールに従った遺産配分ではなく、自分の思うとおりに財産を分け与えたい場合遺言が必要となるのです。

遺言を残すことの主なメリットは下記の通りです。

1 相続争いの未然防止

遺言書が無い場合、国のルールである「法定相続分」で遺産分割が行われます。

相続人が一人の場合なら良いのですが、相続人が複数の場合、遺産をどのように分割するか協議し、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

この遺産分割協議がスムーズに行われれば良いのですが、深刻な争いになることも珍しくありません。

このような争いを防ぐために誰にどの財産を相続させるか遺言書に残しておくのです。

遺言書に遺産分割の方法が指定されている場合には、遺産分割は遺言書に従う事になり、相続人の間で遺産分割協議を巡って争うリスクが減少します。

又、スムーズに遺産分割が進むため、早期に遺産を取得することができ、相続税の申告の際も、申告期限までに分割が行われることにより税務の特例も受けやすくなります。

※相続税の申告期限までに遺産分割がされてない場合に適用が受けられない税法上の特例は下記のとおりです。

いずれも、金額のメリットが非常に大きいため、遺産分割が相続税の申告期限までにされないデメリットは多いと言えます。

①配偶者に対する相続税額の軽減(※)

②小規模宅地等の特例(※)

③非上場株式等についての相続税の納税猶予等の特例

④農地等の相続税の納税猶予等の特例

⑤遺産分割がされていない財産は分割が不可能

※①と②については3年以内に遺産分割がされた場合で、一定の手続きを行う事で適用が可能です。

2 遺言書による自由な遺産配分

遺言によって、財産の配分を決めることができる為、下記のようなケースの場合に大変有効です。

①特定の者に財産を渡したいとき(若しくは渡したくないとき)

 ・相続権の無い人(孫・内縁関係の相手・相続人でない親族・お世話になった人)

②特定の相続人に他の相続人より多く(もしくは少なく)財産を渡したいとき

 ・配偶者に全財産を相続させ、子や父母、兄弟に財産を渡したくないとき

③事業用の財産を事業の承継者に渡したいとき

 ・会社の株式や、事業用の不動産、機械などを承継者に渡し、事業をスムーズに承継させたいとき

④特定の団体に財産を渡したいとき

 ・生前自分の関わりのある団体に財産を使ってもらいたいとき

  社会福祉施設・学校・出生地の市町村・社団・財団法人など

※ただし、遺留分に注意をする必要があります。

3 その他

子の認知、遺言執行者の指定など、遺言を残す事により様々な種類の事項について法的な効力を残す事が可能です。又、法的な効力はなくとも付言事項として、遺言者の想いや感謝の気持ちを伝えることも可能となります。

詳しくは、「Ⅶ遺言書の作成 1 遺言事項」をご覧下さい。

Ⅱ 遺言書には準備が必要

上記の通り、自分の財産を自分の意志で第3者に相続させたい場合、多くのケースで遺言書が必要です。

しかし、せっかく遺言書を作成しても、その遺言書が無効であればその努力は全くの無駄となります。

従いまして、遺言書は十分に準備をし、ルールに従って的確に作成する必要があります。

又、せっかく遺言書を作成しても、その遺言書が見つからないのであれば全く意味がありません。その為、遺言書の保管にも注意を払う必要があります。

さらに、遺言の方法には3種類あり、自分に適した遺言書の形式を選択する事が必要です。

このように、遺言はただ自分の想いを書けば、成立するものではありません。

十分に準備をし、的確に遺言書を作成することが必要です。

Ⅲ 遺言書作成のプロセス

1 知識の収集 

  最低限の相続の知識、遺言書作成の基礎知識は必要です。

2 相続人の確認

  法定相続分の確認や遺留分の確認のため、正確な相続人の把握が必要です。

3 財産の棚卸

  自分の財産には何があるのか、他人が見ても分かるように財産リストの作成が必要です。

4 遺言書の内容及び遺言の方法の選定 

  後日争いが無いように、冷静に遺言の内容を検討します。

  又、遺言の内容・財産の状況・ご自身の状況などにより最も適した遺言の方法を選定します。

5 遺言書の作成

  実際に遺言書を作成します。

7 遺言書のメンテナンス

  財産や相続人、心境の変化により遺言書の内容を変更もしくは撤回します。

Ⅳ 相続人の確認

  まず、遺言書が無い場合、自分が死んだら「誰が」「どのくらい」財産を相続するのかを調べます。言葉を変えて言うと、相続人と相続分の確認します。

  遺言書が無い場合や、遺言で指定された財産以外の財産は、法定相続分で遺産分割がされるため確認が必要です。

  家族関係が複雑な場合や、財産が高額な場合には戸籍謄本などを取得し家系図を作成します。

  又、遺留分を算定するためにも、相続人の確認は必要です。

  ※遺留分とは

  遺留分は、亡くなった被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低保障される財産の事です。

例えば、配偶者と子が相続人の場合、配偶者に全財産を相続させる旨の遺言を作成したとしても、子には財産の4分の1の遺留分がある為、子が遺留分を主張した場合、配偶者が全財産を相続することができません。

Ⅴ 財産の棚卸

  自分の財産の棚卸をして、遺言書を作成するための資料とします。

  一般的に財産リストを財産目録と言います。

  資産だけではなく負債(借入金)などもリストアップします。

  財産目録については、改正により、パソコンで作成しても良い事となった為、財産目録を作成しておくと便利です。ただし、署名・押印が必要ですのでご注意ください。

  財産目録は、PDF若しくはエクセルでご提供します。

○財産目録作成時に役立つ資料

1 固定資産税課税台帳(名寄帳)

2 固定資産税評価証明書

3 不動産登記事項証明書

4 預貯金通帳

5 証券会社の取引明細書

6 配当金支払通知書

7 借入金の返済予定表

8 金銭消費賃貸借契約書

9 生命保険・損害保険の保険証券

10 ゴルフ会員権の証書

Ⅵ 遺言の方法の選択

  遺言の方法には下記の3種類がある為、自分に適したものを選択します。

1 自筆証書遺言書 (自宅などに保管する場合=法務局に保管しない場合)

(1) 内容

 遺言者が自筆で遺言を残す方式です。

 要件は下記の通りです。

①自書

内容が原則として自書されていることが必要です。手書きと言った方が分かりやすいかもしれません。

ボールペンなど消えない文具で紙に記入して下さい。パソコンなどで作成する事は自書には当たりません。

ただし、財産目録を添付する場合、財産目録はパソコンで作成したもので構いません。この方法の場合、ページごとに署名が必要です。又、両面に及ぶ場合には両面に署名・押印が必要です。

②作成日付

作成日付も自書してください。

作成の年月日を必ず記載します。吉日などはNGです。

③署名

遺言書に自分の名前の署名が必要です。通称、ペンネームでも良いとされていますが、トラブル防止の為戸籍上の指名で署名を行うのがベストです。

④押印

遺言書に押印が必要です。指印や認印など実印でなくても構いませんが、実印をお勧めします。

(2) メリット

 ①誰にも知られずに遺言書を作成する事ができる。

 ②公正証書遺言に比べれば、作成費用が掛からない。

(3) デメリット

 ①形式不備によって無効とされる可能性がある。

 ②遺言書が発見されない可能性がある。

2 自筆証書遺言書を法務局で保存する場合

(1) 内容

自筆で書いた遺言書を法務局で保管する方法です。

自筆証書遺言を作成した遺言者本人が自ら法務局に行って保管の申請を行います。保管されるのは封をしていない自筆証書遺言に限られます。

法務局では日付・署名押印があるか、自筆で書かれているかといった形式面のみを審査します。法務局で遺言書の有効性を保証するものでは無く、遺言の内容について法務局で相談に応じることはできません。

遺言者の死後、相続人や受遺者などは自身が関係する遺言書に関しては、遺言書が保管されているかどうかを調べたり、遺言書の閲覧請求などができます。

(2) メリット

①遺言書の安全な保存

遺言書は法務局において適正に管理・保管されます。

(原本:遺言者死亡後50年間,画像データ:同150年間)

従いまして、遺言書の紛失・亡失のおそれがなく、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄,隠匿,改ざん等を防ぐことができます。

②検認が不要

相続開始後,家庭裁判所における検認が不要です。

③相続人・受遺者等のメリット

相続開始後,相続人等の方々は,法務局において遺言書を閲覧したり,遺言書情報証明書の交付が受けられます。

データでも管理しているため,遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず,全国どこの法務局においても,データによる遺言書の閲覧や,遺言書情報証明書の交付が受けられます。(遺言書の原本は,原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。)

④通知

◯関係遺言書保管通知

相続人のうちのどなたか一人が,遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり,遺言書情報証明書の交付を受けた場合,その他の相続人全員に対して,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。

◯死亡時通知

遺言者があらかじめこの通知を希望している場合,その通知対象とされた方(遺言者1名につき、お一人のみ)に対しては,遺言書保管所において,法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に,相続人等の方々の閲覧等を待たずに,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。

(3) デメリット

①自宅で保管している場合に比べ手続きに手間が掛かります。

 法務局へ予約をし、手続きが必要です。

②手数料がかかります。

申請・請求の種別申請・請求者手数料
遺言書の保管の申請遺言者申請1件(遺言書1通)につき,3900円
遺言書の閲覧の請求(モニター)遺言者/関係相続人等1回につき,1400円   
遺言書の閲覧の請求(原本)遺言者/関係相続人等1回につき,1700円
遺言書情報証明書の交付請求関係相続人等1通につき,1400円   
遺言書保管事実証明書の交付請求関係相続人等1通につき,800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求遺言者/関係相続人等申請書等1件又は撤回書等1件につき,1700円

※令枝3年6月20日現在               

③通知制度により他の相続人も、遺言書の存在に気が付きます。

ここは、非常に重要なところなので、ぜひ押さえておいて下さい。

つまりこの制度を使用することで、知られたくない相続人がいる場合には相続があった事と通知を受けた者が相続人である事を知らされてしまうという事です。

従いまして、家族関係が複雑・争いがあるなどで相続があった事を知られたくない相続人がいる場合には最新の注意を払って下さい。

3 公正証書遺言

(1) 内容

公正証書遺言は遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

原則として公証役場で作成します。証人二人以上の立会が必要です。

(2) メリット

①公証人が形式面をチェックし、場合によってはアドバイスを受けながら作成する事ができる為、自筆証書遺言に比べミスが出にくく、内容が明確で証拠能力が高く、安全・確実である。

②遺言書原本を公証役場で作成するため、紛失・偽装・変造・隠匿の可能性が無い。

③字が書けないものでも作成できる。

④遺言書の検認手続きを要しない。

⑤被相続人の死後、どこの公証役場からでも遺言書の有無が検索できる。

(3) デメリット

①公証人役場で手続きが必要など、手続きが煩雑である。

②遺言書の存在と内容を秘密にできない。

③公証人の手数料等の費用が掛かる。財産の内容によって、手数料は異なります。

④手数料の計算方法は日本公証人連合会のウエブサイトに記載があります。

4 秘密証書遺言書

(1) 内容

遺言の内容を秘密にしたい場合にとる方法です。

遺言者が遺言書に署名・押印後、遺言書を封じ、同じ印で封印します。

その後、公証人及び2人以上の証人の前に封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の住所・氏名を申述します。

そして、公証人が遺言書の提出日と上記の申述を封書に記載後、遺言書及び証人とともに署名・押印します。

(2) メリット

①遺言書の存在を明確にして、その内容の秘密が保てる。

②証されている為、偽造・変造の危険性がない。

③パソコンで作成しても良いし、代筆でも構いません。

④正証書遺言に比べて、低額で作成できます。11,000円

(3) デメリット

①公証人が関与するため手続きが煩雑である。

②公証人が遺言書の内容の確認をするわけでは無い為、内容の不備からトラブルが生じたりする可能性がある。

③証人二人以上の立会が必要である。

④保管は遺言者の責任で行う為、紛失等の可能性がある。

⑤自筆証書遺言に比べて費用が掛かる。

Ⅶ 遺言書の作成

1 遺言事項

遺言事項とは何を遺言で残すのかという事です。

何を遺言するかは遺言をする人の自由ですが、遺言できる行為は法律で定められています。

従って、次の法定行為以外の行為は遺言をしても法律上は効力はありません。

ただし、法定効力が無いというだけで書いてはいけないという事ではありません。

(1)相続分の指定、指定の委託

遺言者は遺言で法定相続分の割合と異なった割合で相続分を定め、個々の相続人の相続分を指定する事ができます。

又、相続分の指定を第3者に委託することもできます。(民法902条)

例)配偶者に4分の3、子に4分の1の財産を相続させたい場合

遺言者は遺言者の有する財産の全部を、次の割合で各相続人に相続させる。

・妻 咲子 4分の3

・長男 武夫 4分の1

(2)遺産分割方法の指定、指定の委託

遺産分割方法の指定とは遺言において、遺産分割方法の指定をする事です。

遺言者は、不動産や預金などの個々の財産について、それらを誰に与えるか指定する事が出来、又、その決定を第3者に委託する事ができます。

例)妻咲子に次の土地を与える。

 土地 所在 ○○ 地番 ○○ 地目 宅地 地積 ○○

(3)遺産分割の禁止

一定の期間、遺産の分割を禁止する事ができます。

分割を禁止する事ができる期間は、「相続開始の時から5年を超えない期間」と定められています。

(4)遺贈

遺贈とは遺言によって、財産を譲り渡すことをいいます。遺贈により、相続人で無い人にも財産を残すことができますが、相続人に対して遺贈をしても構いません。

人に限らず、団体に遺贈をしても構いません。

(5)付言事項

法的な効果はありませんが、遺言者の気持ちや考え方など相続人に対して残したい言葉を遺言書において記載する事が出来ます。これが付言事項です。

なぜ、このような遺言を残すのかの理由や想いを書いても構いませんし、家族へのメッセージを残すことができます。

例えば、ある相続人に一切の財産を相続させる遺言書を書いた場合、他の相続人は不満を持つかもしれません。しかし、その遺言を残すことになった過程を遺言書に付言事項として記載する事で、相続人が遺言を受け入れやすくなります。

結果的に、遺留分侵害請求を防止する事につながる事も考えられます。

一般的には下記の項目を記載します。

・家族への希望や願い、感謝の気持ち

・遺言の動機や、相続分の指定・遺産分割の方法の指定など遺言の理由

・葬儀方法の指定や、遺品の処分方法の指定

(6)その他の遺言事項

・一般社団法人の設立

・信託の設定

・特別受益の持ち戻し免除

・相続人相互の担保責任の指定

・推定相続人の廃除とその取り消し

・子の認知

・後見人・後見監督人の指定

・祭祀承継者の指定

・遺言執行者の指定、指定の委託

2 遺言のポイント

(1)満15歳以上であれば未成年者でも行う事が出来ます。

(2)遺言行為は上記の「1 遺言事項」の通り法定されています。

(3)遺言は遺言者の死亡により効力が生じます。

(4)遺言の撤回は自由です。

 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を取り消すことができます。又、前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、前の遺言を後の遺言で取り消したものとみなされます。

3 遺言書の書き方

(1)全てを自筆で書きます。(自筆証書遺言の場合)

タイトルから遺言書の本文、日付(作成年月日)、署名(遺言者の氏名)まで全てが自書、つまり遺言者自身の手書きでなければ遺言書として認められません。

パソコンで作成したもの、ビデオレター、音声録音などはすべて無効です。

※財産目録につきましてはパソコンで作成したものも可能ですが、前ページ署名・押印が必要です。

形式は縦書きでも横書きでも構いません。

前段で相続人の確認をする事も可能です。

遺言内容は項目ごとに箇条書きにするのがスタンダードです。

1.2.3や1条.2条.3条のように箇条書きで遺言をします。

(2)タイトル

タイトルは遺言書・遺言などと記載します。

なくても構いませんが、書いておいた方が、分かり易く無難です。

原則はタイトルを記載します。

(3)財産の処分の表現

財産の処分の表現は「相続」と「遺贈」を使用します。

一般的には、相続人には相続、相続人以外の者には遺贈を使用します。

※遺贈とは遺言によって財産を無償で移転する事を言います。

 相続人以外の者にも遺贈は可能です。

(例)

・相続の場合

遺言者は、妻咲子に次の財産を相続させる。

・遺贈の場合

遺言者は、知人山中咲良に次の土地を遺贈する

配偶者居住権については遺贈するにします。

(4)不動産の記載方法

不動産は登記事項証明書通りに記載します。

土地は、所在、地番、地目、地積を記載します。

建物は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。

未登記の場合には固定資産税課税台帳の記載の通りに記載します。

(5)預貯金、株式などの記載方法

預貯金、株式などは特定できるように記載します。

預貯金は、銀行名、支店名、預貯金の種類、口座名義人、口座番号を記載します。

株式は、会社名、株式数を記載します。

(6)遺言執行者を指定する事ができます。

遺言内容を確実に、スムーズに行う為に遺言執行者を指定しておくことができます。

遺言の内容を執行するものを遺言者といいます。

遺言執行者は財産目録を作成したり、相続財産を管理したり、所有権移転登記など遺言に必要な一切の行為を行います。

原則は遺言で指定又は第3者に委託しますが、遺言で指定されなかった場合、利害関係人の請求により家庭裁判所が選任します。

(7)押印

必ず押印をします。押印は実印でなく認印でも指印でも良いとされています。ただし、偽造や変造を避ける為できるだけ実印を使用するのが望ましいとされています。

訂正にも同じ印を使用します。

(8)訂正

訂正は法的に定められた方法で行います。

自筆証書遺言(財産目録)に加除・訂正を行う場合、次のように行います。

① 遺言書者がその場所を指定し、これを変更した旨を付記します。

 例)本遺言書4行目 「安曇野」の後に1字加入

   上記第3項中、一時削除一時追加

② さらに署名し、かつ、変更箇所に印を押します。上記⑦の印と同じものを使用します。

(9)作成年月日を必ず書く

基本的に「2021年9月30日」「令和3年9月30日」のように書いた日が特定できるように書きます。西暦・和暦どちらでも構いません。「5月吉日」などは無効です。満70歳の誕生日でも構いませんが、余計な疑念が生じないように基本的には作成年月日を記載しましょう。

(10)必ず自筆で署名をする

氏名の自書は、遺言者が誰であるかという事、及び遺言が遺言者本人の意思に基づくものであるかを明らかにするために要求されます。

署名が無いとせっかく残した遺言書は無効になってしまいます。

名前は戸籍上の氏名がベストです。

遺言者が通常使用しているペンネーム、芸名、雅号などでも有効ですが、無用のトラブルを避ける為、戸籍上の氏名が他人から見ても分かり易く安全です。

(11)筆記用具

筆記用具は自由ですが、ボールペンや万年筆など簡単に改ざんできないものを使用します。用紙は自由ですが、ある程度保存に耐えるものを使用します。

自筆証書遺言書を法務局で保存する場合、余白スペースに指定がありますのでご注意ください。

法務局のHPに遺言書の様式のPDFがありますので必要な方はダウンロードしてみて下さい。

※自筆証書遺言書を法務局で保存する場合に必要な余白

左は20ミリメートル以上,上と右は5ミリメートル以上,下は10ミリメートル以上を確保

又、私見ではありますが、遺言書を書く用紙はある程度しっかりしたものを使用した方が良いかと思います。

相続人が遺言書を発見した時に、チラシの裏に書いた遺言書と、しっかりとした用紙に書いた遺言書とでは、受け取り方が違うかと思います。

Ⅷ 遺言書作成と税務ポイント

相続税がかかるケースでは、相続をした者の税金の負担も考えて遺言書を作成することが必要です。

例えば、不動産のみ相続をさせた場合、相続税の納税に困るかもしれません。

最悪、相続をした不動産を売却しないといけないかもしれません。

又、相続をした者が税務上の特例を使用できるかも考えましょう。

小規模宅地や配偶者の税額軽減は非常にメリットが多いので注意が必要です。

又、ケースによっては、居住用財産の特別控除(3000万控除)の使用も考えて遺言書を作成しましょう。

Ⅸ 終わりに

安曇野市・大町市・池田町・松川村で遺言書作成をお考えの方は行政書士寺坂誠相続相談事務所にご相談ください。

今回の記事はいかがでしたでしょうか。

遺言を作成する過程で、財産目録を作成し、自分の人生を振り返ることとなります。

遺言を作成することは自分の人生を整理することにもつながりとても有用なものです。

ぜひ、遺言の作成にチャレンジし見て下さい。

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参考文献

1 元気なうちの相続対策 Q&A 遺言の基本 -改正民法対応版ー 株式会社TKC出版
2 応用自在!遺言書・遺産分割協議書作成のテクニック みらい総合法律事務所編日本法令 令和3年1月5日発行
3 行政書士のための遺言・相続 実務家養成講座 竹内豊 著 税務経理協会  令和2年3月1日発行
4 令和版 遺言の書き方と相続・贈与 比留田 薫 著 株式会社 主婦の友社 2019年8月31日発行

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