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個人事業者の資金の持ち方について。短期・中期・長期の資金運用

この記事は個人事業者様を対象にどのぐらいの資金を持ったら良いか、そして、資金をどのように持ったら良いのかについて解説をしています。

1 必要資金を把握することはとっても大事!

皆様こんにちは^^

本日は、個人事業者様を対象に、資金の持ち方についてご説明します。

皆様は、事業の為にいくら資金を用意しておけば良いかご存知でしょうか。

そして、その資金をどのように運用したら良いかご存知でしょうか。

難しい知識は無くても、経験値で通帳に~~万あれば大丈夫という事を理解している事業者の方は多いと思います。

もちろん経験値による判断は大事ですが、理論的に必要資金を把握することで、下記のようなメリットが生じます。

☆必要な資金を知ることによるメリット
⑴必要な資金を知ることにより、必要な資金を越えて資金を消費することは無くなります。
⑵必要な資金を知ることにより、必要な資金以上の資金は投資に回すことができます。
⑶必要な資金を知ることにより、無駄な借入をすることも無くなります。

つまり、必要な資金を理論的に把握することで、資金を浪費し事業が潰れることを防ぎ、又、必要な資金以上の現金は将来に向かっての投資に回すことができ、そして、適正な借入れをすることができるのです。

又、インフレの現在、現金を持っておくだけでは、現金の価値が目減りしていきます。余裕のある資金はできるだけインフレに強い資産で持っておきたいものです。

ここで問題になってくるのがどのように資金を持ったら良いかという事です。

この記事では、個人事業者にとってどのくらい資金を持ったら良いか解説した上で、どのように資金を持ったら良いのかも解説します。

個人事業者にとって資金の管理は非常に大事です。

この記事が皆様の資金管理のお役に立てれば幸いです。

2 短期で必要な資金

⑴短期で必要な資金の考え方

短期で必要な資金は、通常の運転資金+スポットでの運転資金+生活費となります。

この資金は、絶対に必要な資金です。

間違っても趣味に使ってはいけない資金です。

この短期で必要な資金は、いつでも使うことができ、そして、最も安全な方法で持ちます。

最も安全とは、資金が目減りするリスクにさらさないという事です。

具体的には、為替の影響を受ける外貨や、株式・投資信託などのリスク資産で持つのではなく、日本円で持つという事です。

つまり短期で必要な資金は通帳等の現預金で資金を持ちます。直ぐに解約できるのであれば定期預金でも構いません。

ちなみに、日本では金融機関が破綻しても1,000万まで預金が保護される制度となっています。

金融機関ごとに1,000万以上入れないようにするとより固い運用となります。

普通預金ですが、地元の地銀は普通預金利息が非常に低く、振込手数料が高いのでネット銀行がお勧めです。ネット銀行は一般的に利率が高く、振込手数料も地銀に比べて圧倒的に安いからです。

ネット銀行によっては、~回まで振込手数料無料のようなところもあります。

私は楽天銀行を利用していますが、月3回まで振込手数料が無料の為、開業以来ほとんど振込手数料を支払ったことがありません。

短期で必要な資金=通常の運転資金+スポットでの運転資金+生活費

次に、個々の資金の具体的な内容を見ていきたいと思います。

⑵通常の運転資金

事業を行っているとどうしても必要になる資金があります。これが運転資金です。運転資金にはいろいろな種類がありますが、ざっくりいうと「事業を行うのに必要な資金」となります。つまり、仕入代金や家賃の支払い、人件費、借入金の支払などに充てる為の資金です。

この資金がなければ事業を続けることはできないですから、運転資金は非常に大事です。

通常の運転資金の計算方法は、いくつか種類がありますが、簡単でポピュラーな計算方法は下記の通りです。

1月分の運転資金=(売掛金+受取手形など※+棚卸資産)-(買掛金+支払手形など※)

※電子記録債権を含めます。

上記の計算式は、売上から経費を引いたら少なくとも0以上で(赤字でないこと)、借入金の返済額が無い事を前提としています。

多くの事業主様は借入金の返済があるでしょうから、毎月の返済額を上記の算式に加算します。

この数値は青色申告決算書など正確で確定した数値から計算しましょう。

たまたま売掛金が多かった場合などは正確な数字が出ませんから、異常値を外したり、期中での売掛金残高の平均値を用いても構いません。

ただし、この数値は、事業の発展や衰退に応じて変化しますので時折計算してみることが大事です。

下記は具体例となります。

      項目  金額  
⑴ 売掛金80万
⑵ 受取手形(電子記録債権)20万
⑶ 棚卸資産20万
⑷ 買掛金30万
⑸ 運転資金 ⑴+⑵+⑶-⑷90万
⑹ 3か月分の運転資金270万
⑺ 6か月分の運転資金540万
※借入金の返済額があれば加算+α

このケースでは運転資金は90万とされました。

意味合いとしては、売掛金や受取手形は販売しても直ぐに現金となりません。その金額が80万+20万で100万円です。又、棚卸資産もすぐに現金化されないので追加で20万が必要です。そうすると見かけ上利益は出ていても、販売金額の120万は現金として残っていないという事になります。つまり、初めから120万を用意しておく必要があります。ただし、買掛金は商品は購入したけれどもすぐに支払わなくてよい金額です。売掛金とは反対の性質ですから、必要資金120万から30万を差し引く事となります。すると運転資金は90万という事になります。

又、上記の結果計算された運転資金は1月分となります。

一般的に必要な運転資金は3か月~6か月分という事になります。

金融機関もこのような見方をしますので、自分が運転資金の3か月分~6か月分持っているかは確認したいところです。

通常の運転資金=運転資金×3~6月分

上記の例で計算すると、270万から540万となりますね。

⑶スポットでの運転資金

運転資金は通常の運転資金の他、スポットで必要になる場合があります。

当然、通常の運転資金に加えて資金を持っておく必要があります。

例えば下記の様な支出がスポットで必要な資金となります。

①設備購入のための資金

②賞与の支払い

③退職金の支払い

④所得税・消費税・事業税の支払

⑤売上増加時に増えていく費用の金額

⑥売上が急激に減り、損益分岐点売上高を維持できなくなった場合の減少してく金額

⑷生活費

最後に生活費が必要となります。

これは、個人事業者に独特の資金となります。

会社の会計においては、個人の保有資産と会社の保有資産を区分して考えますので、会社の資金計算にあたって個人の生活費は特段考慮しません。(生活費は役員報酬という形で支出し、運転資金に含まれます)しかし、個人は生活費も含めて必要な資金を計算するのが良いかと思います。なぜかというと、分離して計算しても、結局合算して必要な資金はいくらかを考えるからです。

生活費ですが、個人事業者の場合2年間分は欲しいところです。

生活費が20万であれば480万、30万であれば720万となります。

皆様は、生活費としてそんなに必要かと思うかもしれません。しかし、コロナを思い出してください。コロナは3年間は続きました。

幸い、令和のコロナ禍は事業者に補助金・助成金などがかなり配られましたが、次の災害には補助金が出るかどうかは分かりません。

2年間売上が無いという事も想定すべきです。

又、2年間あれば、何かあったとしても再起ができます。

2年間の生活費を持つことで心に余裕が生まれます。この余裕は何にも代えがたいものです。

心に余裕があると、利益にならない仕事・本来はやってはいけない仕事・気の乗らない仕事等々は躊躇なく断ることができます。

⑸必要な資金を合計する

項目金額
⑴通常の運転資金540万
⑵スポットでの運転資金200万
⑶生活費480万
⑷合計1,220万

さて、通常の運転資金、スポットでの運転資金、生活費2年分の資金が必要だという事が分かりました。最後に、この3つの資金を合算します。

上記の例でいうと、通常の運転資金の必要額が540万です。スポットでの運転資金ですが、200万の機械購入が必要だとしましょう。生活費は月20万で2年分で480万円です。合計すると、1,220万となります。

1,220万の資金がなかったら、早急に1,220万資金が貯まるように動きます。1,220万の資金がたまったら、事業継続のための最低ラインの資金は保有していますから、剰余金は中期や長期で必要な資金にシフトしていきます。

皆様、一度自分の事業にとってどれだけ資金が必要か計算してみて下さい。

おそらくは、必要な資金に足りてないのではないでしょうか。

⑹資金の持ち方

原則的には短期で必要な運転資金等は日本円で持ちますが、現在インフレが進んでおり、資金が目減りするリスクも考えたいものです。

その為、生活費の1年分は個人向け国債10年で持つことをお勧めします。

なぜかというと、個人向け国債の10年は1年たつと解約することができ、元本が保証されるからです。

解約時には受け取った利息の1年分が控除され、見かけはマイナスとなりますが、利息を合わせて考えると元本割れをしておりません。それでいて、普通預金より断然利息が良いです。

2023年7月17日現在個人向け国債10年の利率は0.28%となっています。私が済んでいる地域の地銀のスーパー定期が0.002%ですから14倍の金利となります。

ただし、個人向け国債の3年・5年は購入してはいけません。利率が0.05%とたいして良い利率ではありません。ネット銀行の利息の方が高いくらいです。

又、上記でも述べましたが、ネット銀行に預金するのも良い方法です。

地元の地銀に比べて圧倒的に高い利率を誇ります。

まとめますと、短期で必要な資金については、段階別に下記の方法で持つこととします。

ただし、業種や地域、経済状況により資金の持ち方は個々に異なるので、自分にとってのベストな資金の持ち方を修正を加えつつ研究していきます。

①現金(普通預金):運転資金3か月分+スポットでの資金+生活費1年分
②ネット銀行の預金・定期預金:運転資金3か月分+資金量や予定に合わせてスポットでの資金や生活費を貯金
③個人向け国債10年:生活費1年分

上記の例で、当てはめると下記の例のようになります。

項目運転資金スポットで必要な資金生活費合計
地元の地銀など普通預金270200※240※710
ネット銀行の預金・定期預金など270  270
個人向け国債10  240240
合計5402004801,220
※状況に応じてネット銀行や個人向け国債10年でも構いません。

※預金保険機構により保護されるのが一金融機関につき1,000万の為、資金の状況によっては1,000万を超えないように金融機関を分散させる。

3 中期で必要な資金

中期で必要な資金とは、プライベートな車の購入に関する支出、住宅の購入、子供の進学費用など、直ぐにではないけれども、何年後かには必ず支出するまとまった額の支出を言います。

事業上の設備の購入資金は短期で必要な資金に区分して、ノーリスクの資産で資金を持ちます。

中期で必要な資金は、元本を確保したいものの、普通預金・定期預金で持つにはインフレリスクがあり、ある程度の利回りを期待したい資金です。

ただし、目的はあくまでインフレリスクの回避であり、インフレ率以上の利回りを期待するものではありません。

今までは、中期に必要な資金をどのように持つのかが個人事業者にとっての難問でした。

しかし、近年良い制度ができました。

皆様ご存知NISAです。それも令和6年から始まる新NISAが秀逸です。

この制度は、非課税口座を開設することで、配当・譲渡益などの収益に対して税金が係らないという非常に優れたものです。通常、金融商品には20%の税金が係りますから、20%分有利になるという事です。1,000万の利益であれば通常の課税口座に比べて200万有利です。

しかし、NISA口座で運用するのはあくまでリスク商品となります。リスク商品には必ず元本割れのリスクが生じます。

又、金融機関の選択によっては手数料が高く資金が目減りしていきます。

そこで、中期で必要な資金を比較的安全にそして、インフレに負けない様に運用する為に下記のような方法をご提案します。

⑴手数料の安いネットの証券会社のNISA口座で運用すること
→間違っても地銀で口座開設したらダメ。普段お世話になっていても自分の資金を守る為に鬼になるべし。個人的には楽天証券かSBI証券がお勧めです。

⑵運用は、手数料が安くて純資産が手厚く実績のある世界株式インデックスファンド一本に絞ること
→全世界に広く投資をすることでリスクを限りなく減らすことができます。ただし、基本的に長期で運用することとなります。短期で取り崩しては駄目です。短期で取り崩さない為、短期で必要な資金を計算し、手を付けないようにしているのです。

以上の2つを守るだけです。

へたに、暗号資産や外貨預金、良く分からない金融商品に手を出してはいけません。

これらは、短期・中期・長期でもなく、「遊び」の資金で、「趣味」で行うべきです。

なぜなら、投資とリターンの関係が不明で、極論、ギャンブルだからです。

債権も個人向け国債10年以外は不要です。

ちなみに私がお勧めしている世界株式の投資信託は次の通りです。

下記の3つの投資信託は手数料も安く、本当にお勧めできます。そして、私も実際に積立投資を行っています。

ただ、投資を始める際には最低10年の積み立てを考えて頂ければと思います。

①SBI・全世界株式インデックス・ファンド
②楽天・全世界株式インデックス・ファンド
③eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

※上記の投資信託には似ている名前のものが多々ありますのでご注意下さい。

4 長期で必要な資金

長期で必要な資金とはすなわち老後に必要な資金のことです。

個人事業者にとっての退職金となります。

この資金はiDeCo若しくは小規模企業共済で持つこととします。

国民年金基金という手もありますが、基本的に年金です。

個人事業者は定年が無いので、体が続く限り働けば年金は不要です。

その為、体が動かなくなって廃業する際にドカンと現金が入ってくる退職金が欲しいのです。

iDeCo・小規模企業共済ともに掛金が所得控除の対象となります。その為、積み立て時の節税メリットがあります。又、iDeCo及び小規模企業共済ともに解約の制限があります。

通常はデメリットとして考えれられますが、個人事業者にとっては強制的に貯蓄されることとなりますのでプラスに働くのです。

小規模企業共済は途中で解約できないという事ではないのですが、解約すると不利になるので廃業時まで解約しないでおこうというインセンティブが働きます。

制度ごとの引出制限をNISAを含めてまとめると下記の表のようになります。

制度引出制限
iDeCo原則60歳まで引き出せない
小規模企業共済解約できるが加入期間が20年未満の場合、掛金合計額を下回る
NISAいつでも引き出せるが、投資対象の運用成績によっては元本を下回る
(元本を上回る可能性もあり、その際には税金は課税されない)
制度と引出制限

ちなみに、iDeCoで商品を運用する場合、中期で必要な資金で述べたように、ネット証券で全世界株式のインデックスファンドに投資をします。

又、小規模企業共済につきましては詳細を解説しておりますので下記のブログをご参照ください。

5 まとめ

まず、個人事業者様は事業の継続に必要な短期での資金を十分に持つことに留意をして下さい。

そして、短期で必要な資金がたまったら、中期で必要な資金を貯めていきます。そして、それと同時に長期で必要な資金、すなわち老後の資産もためておきます。こちらにつきましては、税制的に優遇されているiDeCo・小規模企業共済を利用します。

初めの内は資金を貯めていくのは苦しいのですが、資金がたまりだすと、楽しくなっていきます。

又、運転資金などは事業の進展とともに変化していきますから、適度に見直しをしてみて下さい。

さらに、どのようにしたら運転資金を減らせるかも考えてみるのも非常に良い事です。

運転資金が減らせれば、中期・長期で必要な資金に割り振ることができます。

ぜひとも、数字を見ながら論理的に個人事業者としての経営を行って頂ければと思います。

この文章が皆様のお役に立てれば光栄です。

6 投資信託について

投資信託につきましてはリスク商品となっています。運用につきましては、元本は保証されませんので自己責任で投資をお願いします。

ただし、良くある失敗例としては、短期で必要な資金を投資信託に投入してしまい、意図しない状況で解約し損失を出してしまうというものがあります。

今回ご紹介させて頂いた方法では、短期で必要な資金を十分に確保していますから、意図しないタイミングで解約するというリスクを避けるように考えられています。

又、iDeCo・小規模企業共済は税制上所得控除となり税額が安くなりますから、仮に投資信託で損失となっていても税効果を考えるとプラスになるという事も十分に考えられます。

安曇野市の税務相談なら寺坂誠税理士事務所!
今回の記事はいかがだったでしょうか。
当事務所ではスポットの相談もお受けしております。
税金のことでお困りでしたらお気軽にご相談下さい。

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