土地売買業の税務・会計について
松本市・安曇野市の税金・会計の事なら寺坂誠税理士事務所
土地売買業につきましては、通常の会計処理とは特殊な部分が多々あります。
今回は、土地売買業における税務・会計の主な論点を簡単な言葉で説明したいと思います。
目次
土地を売却した時点で売上の計上となりますが、どの時点で売上を計上するのかが問題となります。
不動産取引の大まかな流れは下記の通りです。
①契約
②手付金の受領
③代金の受領
④物件の引渡
⑤所有権移転登記
法人税法上、商品(土地売買業では土地)の売上計上時期は引渡しが行われた日に計上します。
引渡しの日とは、土地売買業の場合、代金の支払が完了し、所有権移転登記の申請をした日となります。
ただし、契約基準も有効(一般的には契約の締結の日)です。この場合には、売上の前倒し計上となりますが、基本的には、継続適用となります。
いずれにしろ、不動産の収益計上基準として、「引渡し基準」若しくは「契約基準」を選択し、その選択した収益計上基準を継続適用する事となります。
※処理基準を変更する事は可能ですが、変更した場合、しばらくの間は新たに選択した会計処理基準を適用することとなります。
土地売買業は、一般の商品売買業とは異なり、土地を仕入れてから、造成をし、販売活動をし、最終的にお客様に引き渡すまでの期間が長期となります。
その為、会計処理も、通常の商品売買業とは異なる処理をします。
通常、商品を仕入れた場合「仕入」勘定で処理をしますが、土地売買業の場合には勘定科目は「販売用土地」など、貸借対照表項目を使用します。
これは費用として処理をするのではなく、資産として処理をするという意味合いです。
専門用語で棚卸資産といいます。
通常の商品売買業でも期末の在庫を資産計上しますが、土地売買業の場合、取引時点から資産計上します。
又、造成費や外注費を支払った場合、販売用土地に加算していく事になります。
販売用土地として処理をする主な科目は下記の通りです。
原則的には土地に係る支出は棚卸資産として計上します。
・土地仕入原価
・取引業者への外注費(造成費等)
・測量地盤調査費用(ボーリング調査)
・土壌汚染調査費用
・建築現場警備委託料
・建築現場責任者人件費
・当初から支出が予定されている近隣住民対策費
・仲介手数料
・その他個別の土地に対して行われる費用(イメージとしては、土地の価値を上げるもの、その支出をしなければ商品として成立しないもの)
☆仕訳例
・3/1に土地を10,000,000円で購入し、5/1に2,000,000円の土地造成をした場合の仕訳例
日付 | 借方 | 貸方 | 金額 | 適用 |
3/1 | 販売用土地 | 普通預金 | 10,000,000 | 土地仕入 |
5/1 | 販売用土地 | 普通預金 | 2,000,000 | 造成費支出 |
この場合、販売用土地勘定には10,000,000円+2,000,000円で12,000,000円計上される事となります。
※販売用土地勘定
日付 | 適用 | 金額 |
3/1 | 土地仕入 | 10,000,000 |
5/1 | 造成費支出 | 2,000,000 |
小計 | 12,000,000 |
さらに、この土地を20,000,000円で売却したとしましょう。
このタイミングで販売用土地に計上されていた金額を売上原価に振替します。
・3/1に土地を20,000,000円で計上した場合の仕訳例
借方 | 貸方 | 金額 | 適用 |
普通預金 | 売上 | 20,000,000 | 売上計上 土地販売 |
売上原価 | 販売用土地 | 12,000,000 | 売上原価計上 |
損益計算書には、売上20,000,000円、売上原価が12,000,000円計上される事となり、利益は8,000,000円と計算されます。
科目 | 金額 |
売上 | 20,000,000 |
売上原価 | 12,000,000 |
売上総利益 | 8,000,000 |
支出の中には、土地に関する支出でも販売用土地(棚卸資産)として処理をしなくても良い科目があります。
つまり、支出時に費用計上が可能です。
主なものは下記の通りです。
・不動産取得税、登録免許税
・当期又は登録に要する費用。具体的には司法書士報酬
・土地を取得するための借入金利子
・契約書の収入印紙
・固定資産税
・司法書士報酬を100,000円支払った場合の仕訳例
借方 | 貸方 | 金額 | 適用 |
支払手数料(PL) | 普通預金 | 100,000 | 預金支払 司法書士報酬 |
土地の販売につきましては消費税は掛かりません。
消費税は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。
土地の販売は非課税の為、売上が土地の販売代金だけの場合、現行の制度の下では永遠に消費税の課税事業者となりません。
消費税の支払い義務が無い為、消費税の申告も必要ありません。
これは、期中の会計処理も消費税を意識しなくて済むため、非常にメリットがあります。
ただし、選択により消費税の課税事業者となる事も可能です。
土地の販売は消費税が非課税ですが、支払った場合には消費税が課税される取引も多々ある為、消費税の還付を狙うケースです。
この場合、高度な有利不利のシュミレーションが必要なります。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
土地売買業は一回の売上が多額となりますので、慎重な税務・会計処理が必要です。
ちょっとでも分からないことがありましたら、調べるという慎重さが必要です。
①法人税基本通達逐条解説 税務研究会出版局
②不動産取引の会計・税務Q&A EY新日本有限責任監査法人/EY税理士法人/EYトランザクション・アドバイザリー・サービス㈱ 中央経済社
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