• 長野県安曇野市の税理士 経営者困り事相談所 親切・丁寧・誠実をモットーに貴社の事業を全力でバックアップします! 税金の相談なら寺坂誠税理士事務所

iDeCoと小規模企業共済、受け取る順番に注意!「10年・20年」と退職所得控除

iDeCoと小規模企業共済、受け取る順番に注意!「10年後・20年後」と税金の関係

安曇野の風景を背景に、夫婦でiDeCoと小規模企業共済の資料を見ながら、受取の順番や時期を確認するイラスト。

小規模企業共済やiDeCoに加入されている、安曇野市・松本市などの個人事業主・会社経営者の方へ。

老後の資金を準備するために、両方の制度を利用されている方もいらっしゃると思います。

ただし、掛金を払うときだけでなく、お金を受け取るときの税金にも注意が必要です。

特に大切なのが、退職所得控除の重複調整です。受け取る順番によって、過去の受取を確認する期間が「前年以前19年内」「前年以前9年内」と異なります。

年数の数え方が難しいため、具体例を交えて説明します。

※この記事は、ご本人が生存中に受け取る場合を対象とし、iDeCoは老齢給付金について説明しています。両方を一時金で受け取り、小規模企業共済も退職所得に該当する場合を前提としています。

1.退職所得控除は、別々に満額使えるとは限りません

退職所得控除とは、退職金などの税金を計算するときに、勤続年数や掛金を払い込んだ期間などに応じて差し引ける金額です。

iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取る場合や、小規模企業共済を退職所得として受け取る場合に利用できます。

ただし、両方の制度に加入していた期間が重なっている場合には、同じ期間について退職所得控除を二重に使わないように、控除額を調整することがあります。

「別の制度だから、それぞれ退職所得控除を満額使える」とは限らないのです。

その調整が必要かを確認するうえで重要なのが、次の受取順序です。

受け取る順番後の受取時に確認する期間
小規模企業共済 → iDeCoiDeCoを受け取る年の前年以前19年内
iDeCo → 小規模企業共済小規模企業共済を受け取る年の前年以前9年内

※9年のルールは、先に受け取るiDeCo一時金が2026年1月1日以後の受取である場合に適用されます。

対象期間内に受取があり、控除の計算に使う期間が重なっていれば、原則として調整計算が必要です。実際の調整額は、過去の受取額などによっても異なります。

参考:[国税庁「退職所得の受給に関する申告書・記載要領」]

2.小規模企業共済を先に受け取る場合は「20年後以降」が目安

先に小規模企業共済を退職所得として受け取り、その後にiDeCoを一時金で受け取る場合です。

iDeCoを受け取る年の前年以前19年内に、小規模企業共済などの退職所得を受け取っていると、重複調整の確認対象になります。

先の小規模企業共済をこの対象期間から外すには、共済金を受け取った年の20年後以降にiDeCoを受け取る必要があります。

受取年を「1年目」と数える場合は、21年目以降です。

例えば、小規模企業共済を2026年に受け取った場合は、次のようになります。

後のiDeCo受取年2026年を1年目とした数え方2026年の共済金の扱い
2045年20年目=19年後調整の確認対象
2046年21年目=20年後この対象期間から外れる

「20年後」と「20年目」は、同じではありません。

「小規模企業共済を受け取ってから、もう10年以上たっているから大丈夫」とも限りませんので、注意してください。

また、確認するのは小規模企業共済だけではありません。勤務先の退職金など、ほかの退職所得の受取歴も確認します。

3.iDeCoを先に受け取る場合は「10年後以降」が目安

反対に、先にiDeCoを一時金で受け取り、その後に小規模企業共済を退職所得として受け取る場合です。

2026年1月1日以後に受け取ったiDeCo一時金については、後の小規模企業共済の受取年から見て「前年以前9年内」に該当すると、重複調整の確認対象になります。

先のiDeCoをこの対象期間から外すには、iDeCoを受け取った年の10年後以降に小規模企業共済を受け取る必要があります。

受取年を「1年目」と数える場合は、11年目以降です。

例えば、iDeCoを2026年に受け取った場合は、次のようになります。

後の小規模企業共済の受取年2026年を1年目とした数え方2026年のiDeCoの扱い
2035年10年目=9年後調整の確認対象
2036年11年目=10年後この対象期間から外れる

こちらも、「10年後」と「10年目」を混同しないようにしてください。

なお、2025年12月31日以前に受け取ったiDeCo一時金については、原則として「前年以前4年内」の取扱いを確認します。

以前の情報を見て「iDeCoを先に受け取れば、5年ずらすだけでよい」と判断しないことが大切です。

4.年数の数え方が難しいため、具体的な年で確認してください

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

受け取る順番先の受取が対象期間から外れる時期
小規模企業共済 → iDeCo共済金を受け取った年の20年後以降(受取年を1年目として21年目以降)
iDeCo → 小規模企業共済iDeCoを受け取った年の10年後以降(受取年を1年目として11年目以降)

※iDeCoを先に受け取る場合は、2026年1月1日以後のiDeCo一時金についての説明です。

さらに、満10年間・満20年間という日数ではなく、年単位で判定することにも注意が必要です。

例えば、2026年12月にiDeCoを受け取り、2036年1月に小規模企業共済を受け取る場合、満10年間は経過していません。

それでも、2036年の前年以前9年内は2027年から2035年までなので、2026年のiDeCoは対象期間から外れます。

年数の数え方は間違えやすいため、「何歳で受け取るか」「何年間空けたか」だけで判断せず、具体的な受取年を並べて確認してください。
エクセルシートなどで西暦・和暦と経過年数を入力して計算すると分かり易くなります。

また、小規模企業共済の任意解約では、解約日(受付日)の属する年が課税年になります。実際の入金日だけで年を判断することもできません。

5.同じ年に受け取る場合も、確認が必要です

小規模企業共済とiDeCoを同じ年に退職所得として受け取る場合は、原則として、両方の受取額を合算して計算します。

この場合も、加入期間などの重複を踏まえて退職所得控除を計算するため、それぞれ別々に満額の控除を使えるわけではありません。

根拠:[国税庁「同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm)

6.対象期間内でも、必ず税金がかかるわけではありません

ここまで読むと、「10年後・20年後まで待たないと、必ず税金がかかるのでは」と心配されるかもしれません。

しかし、対象期間内に受け取ったとしても、計算上の重複期間がなければ、重複による控除額の調整は生じません。

また、調整が必要な場合でも、調整後の退職所得控除額の範囲内に受取額が収まれば、退職所得に対する税金は生じません。

以前に受け取った金額が退職所得控除額より少ない場合には、その金額に応じて重複期間の計算が変わることもあります。

大切なのは、年数だけで判断せず、加入期間・受取額・受取年を確認して計算することです。

7.小規模企業共済は、解約理由にも注意してください

小規模企業共済は、受け取る理由や年齢によって所得の種類が変わります。

例えば、65歳未満で任意解約する場合は、原則として「一時所得」となり、退職所得控除は使えません。

一方、65歳未満でも、廃業による共済金などを一括で受け取る場合には、退職所得となります。

「65歳未満ならすべて一時所得」という意味ではありません。年齢だけでなく、受取理由も確認する必要があります。

根拠:[中小機構「小規模企業共済の共済金・税制面での優遇措置」](https://skyosai.smrj.go.jp/skyosai-yakuin-tainin/)

8.解約・受取の手続きをする前に、ご相談ください

小規模企業共済やiDeCoは、受け取る順番や時期を決める前の確認が大切です。

ご相談の際には、次の資料をご用意ください。

  • 小規模企業共済・iDeCoの加入期間や掛金の払込期間が分かる資料
  • それぞれの受取見込額が分かる資料
  • 過去に受け取った退職金などの源泉徴収票・支払通知書
  • 今後の受取予定や廃業・引退の予定

この記事の「10年後・20年後」は、重複調整の対象期間についての説明です。その年まで受取を先延ばしすることを、一律におすすめするものではありません。

生活資金の必要性や、各制度の受取可能年齢・請求条件も踏まえて検討する必要があります。

当事務所では、加入状況や過去の受取歴を確認し、受取時の税務上の注意点を分かりやすくご説明します。

小規模企業共済の解約・請求や、iDeCoの受取手続きをする前に、当事務所へご相談ください。


9.参考法令

所得税法 第30条 退職所得
所得税法施行令 第70条 退職所得控除額の計算の特例
<寺坂注:下記は一部抜粋、かっこ書きは一部削除>
二 次に掲げる場合において、その年に支払を受けた退職手当等につき第69条第1項各号の規定により計算した期間の基礎となつた勤続期間等の一部がその年の前年以前に支払を受けた退職手当等に係る勤続期間等と重複している場合 その重複している部分の期間を法第30条第3項の勤続年数とみなして同項の規定を適用して計算した金額
イ その年の前年以前4年内に退職手当等の支払を受け、かつ、その年に退職手当等の支払を受けた場合(ロ及びハに掲げる場合に該当する場合を除く。) その年の前年以前4年内に支払を受けた退職手当等
ロ その年の前年以前9年内に第72条第3項第7号(退職手当等とみなす一時金)に掲げる一時金(令和8年1月1日以後に支払を受けたものに限り、前号に規定する前に支払を受けた退職手当等を除く。)の支払を受け、かつ、その年に退職手当等の支払を受けた場合 次に掲げる退職手当等
(1) 令和8年1月1日以後に支払を受けた退職手当等であつてその年の前年以前9年内に支払を受けたもの
(2) 令和8年1月1日前に支払を受けた退職手当等であつてその年の前年以前4年内に支払を受けたもの
ハ その年の前年以前19年内に退職手当等の支払を受け、かつ、その年に第72条第3項第7号に掲げる一時金の支払を受けた場合 その年の前年以前19年内に支払を受けた退職手当等

10.免責事項

本記事は、2026年9月5日時点で確認できる法令・通達・国税庁および公的機関の公表資料に基づき、一般的な取扱いを分かりやすく説明したものです。すべての要件や例外を網羅するものではありません。

実際の税務上の取扱いは、加入期間、過去の退職金等の受取状況、受取理由・方法などによって異なります。また、今後の法令改正等により取扱いが変わる場合があります。記事中の将来の受取年の例は、現行制度を前提としています。

実際に解約・請求・受取を行う際は、本記事のみで判断せず、事前に税務署または税理士へご相談ください。制度上の手続きや受取条件については、各制度の窓口にもご確認ください。

コメントを残す