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この記事は、安曇野市などにお住まいで、相続財産が1億円前後の方を主な対象にしています。当事務所が安曇野市でご依頼を受ける相続税申告も、財産総額1億円前後の案件が中心です。
「自宅や土地、預貯金を合わせると、それなりの金額になる。相続税対策をした方がよいのだろうか」
そのようにお考えの方もいらっしゃると思います。
相続税対策で大切なのは、まず税額の見当をつけることです。そのうえで、ご自身の生活資金を確保しながら、ご家族に合った方法を選びましょう。
この記事では、具体的な税額と、主な相続税対策をご紹介します。
※2026年9月5日時点で確認できる国税庁の公表資料等に基づいています。
相続税には、次の基礎控除があります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
相続税の対象となる財産を集計し、非課税財産や債務・葬式費用などを適切に処理し、生前贈与の加算も確認したうえで、基礎控除と比較します。
もともと相続税がかからないのであれば、相続税を減らすためだけの対策は必要ありません。 節税のために費用をかけたり、無理に財産を贈与したりする前に、申告や納税が必要かを確認しましょう。
なお、土地・建物は、購入価格や売却できそうな価格をそのまま使うわけではありません。相続税のルールによる評価が必要です。
また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合には、原則として相続税の申告が必要です。 「納税がないこと」と「申告が不要なこと」は区別してください。
税金がかからなくても、財産の整理や、ご家族が円滑に引き継ぐための準備には意味があります。
「相続税は最高55%」という情報を見て、不安を感じる方もいらっしゃいます。
しかし、財産全体にいきなり55%がかかるわけではありません。基礎控除を差し引き、法定相続分で分けた金額に税率を当てはめて計算します。
夫が亡くなり、妻と子2人が法定相続分どおりに相続する例です。
計算を分かりやすくするため、次の前提とします。
まず、基礎控除を差し引きます。
| 計算内容 | 金額 |
|---|---|
| 正味の遺産額 | 8,000万円 |
| 基礎控除:3,000万円+600万円×3人 | ▲4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 3,200万円 |
次に、この3,200万円を法定相続分で分けて、相続税の総額を求めます。
| 相続人 | 法定相続分 | 計算上の取得金額 | 税額計算 | 算出税額 |
|---|---|---|---|---|
| 妻 | 2分の1 | 1,600万円 | 1,600万円×15%-50万円 | 190万円 |
| 子1人目 | 4分の1 | 800万円 | 800万円×10% | 80万円 |
| 子2人目 | 4分の1 | 800万円 | 800万円×10% | 80万円 |
| 合計 | ― | 3,200万円 | ― | 350万円 |
この350万円を、実際に取得した財産の割合で各人に配分します。その後、妻には配偶者の税額軽減を適用します。
| 相続人 | 実際の取得財産 | 総額350万円の配分 | 配偶者の税額軽減 | 最終的な納税額 |
|---|---|---|---|---|
| 妻 | 4,000万円 | 175万円 | ▲175万円 | 0円 |
| 子1人目 | 2,000万円 | 87万5,000円 | ― | 87万5,000円 |
| 子2人目 | 2,000万円 | 87万5,000円 | ― | 87万5,000円 |
| 合計 | 8,000万円 | 350万円 | ▲175万円 | 175万円 |
このケースでは、家族全体の相続税は175万円です。財産8,000万円に対して約2.2%となります。
配偶者の税額軽減により、配偶者が実際に取得する正味の遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までであれば、配偶者の相続税はかかりません。
以下の税率は、基礎控除後の課税遺産総額を、法定相続分で分けた金額に適用します。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参考:国税庁「相続税の税率」
同じ前提で財産が1億円の場合も、妻と子2人が法定相続分で相続すれば、家族全体の相続税は315万円です。
もちろん、175万円や315万円は軽視できる金額ではありません。ただ、税額を確認せずに、何千万円も使う対策や、大きなリスクを伴う対策を始める必要はないということです。
なお、配偶者がいない場合などは税額が変わります。例えば、正味の遺産額8,000万円を子2人だけで相続する場合、他の特例や税額控除がなければ、相続税の総額は470万円です。
また、妻が亡くなったときの相続、いわゆる「二次相続」も考える必要があります。妻ご自身の財産も含めて検討しましょう。
暦年課税では、贈与を受ける方1人につき、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から、110万円の基礎控除を差し引きます。
この基礎控除を活用し、無理のない範囲で少しずつ財産を移していく方法があります。
110万円は、贈与する方ごとではなく、受け取る方ごとの年間合計です。 父から110万円、母から110万円を同じ年に暦年課税で受け取れば、合計220万円で判定します。
贈与は、渡す方と受け取る方の合意が前提です。贈与契約書や振込記録を残し、受け取った方の財産として管理することが大切です。
亡くなった方から相続などで財産を取得する方については、一定期間内の暦年贈与が相続税の計算に加算されます。年間110万円以下の贈与でも、対象となる場合があります。
| 相続開始日 | 原則となる加算対象期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日まで |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
延長された3年超の部分には、贈与額の合計から総額100万円を加算対象から除く取扱いがあります。毎年100万円ではありません。
「110万円以下なら必ず相続税対策になる」とは限らないため、贈与する相手や時期も確認しましょう。
相続時精算課税は、原則として、贈与年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母などから、同日に18歳以上の子・孫などへの贈与について選択できる制度です。
2024年以後の贈与には、年110万円の基礎控除があります。この基礎控除に当たる部分は、原則として贈与者が亡くなったときにも相続税へ加算されません。
そのため、相続税対策として検討する価値があります。
ただし、次の点に注意してください。
| 項目 | 主な内容・注意点 |
|---|---|
| 年110万円の基礎控除 | 複数の贈与者から相続時精算課税による贈与を受けても、受贈者1人につき合計110万円 |
| 累計2,500万円の特別控除 | 贈与者ごとの限度額。適用には期限内の贈与税申告が必要 |
| 将来の相続税 | 年110万円の基礎控除を超える部分は、原則として贈与時の価額で加算 |
| 制度の変更 | 選択した贈与者からの贈与について、暦年課税には戻せない |
| 最初の手続き | 年110万円以下でも、選択届出書などの提出が必要 |
2,500万円まで相続税もかからなくなる制度ではありません。
また、この制度で贈与した土地には、相続時に小規模宅地等の特例を適用できません。自宅の土地を先に贈与した結果、かえって不利になることもあります。
相続時精算課税には、ほかにもさまざまな注意点があり、メリットとデメリットのある制度です。選択後に戻せない点も含め、誤解が後のトラブルにつながりやすいため、利用する前に税理士に相談して判断することをお勧めします。
父母・祖父母などから、住宅の新築・購入・一定の増改築のための資金を贈与してもらう場合、要件を満たせば次の非課税枠を使えます。
| 住宅の区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 一定の省エネ・耐震・バリアフリー基準を満たす住宅 | 1,000万円 |
| それ以外の住宅 | 500万円 |
現行制度の対象は、2026年12月31日までの贈与です。
贈与を受ける方の年齢・所得、住宅の床面積・性能、取得や入居の時期などに要件があります。また、過去の利用状況によっても取扱いが変わります。
非課税枠の適用を受けるには、税額がゼロでも期限内に贈与税の申告をする必要があります。 要件を満たして非課税となった部分は、贈与者が亡くなった際の相続税にも加算されません。
参考:国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
2026年12月31日までの一定の住宅取得等資金の贈与では、贈与する親・祖父母などが60歳未満でも、相続時精算課税を選択できる特例があります。
住宅取得等資金の非課税と組み合わせられる場合もありますが、こちらは「相続時精算課税を選択するための年齢要件の特例」です。非課税枠がそのまま増える制度ではありません。
住宅の取得前、資金を渡す前に確認しましょう。
参考:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」
私がお勧めしたい方法の一つが、お子さんやお孫さんに、その都度必要な生活費・教育費を援助することです。
親や祖父母などの扶養義務者から受け取る生活費・教育費は、通常必要と認められる範囲で、必要な都度その費用に直接充てるものであれば、贈与税がかかりません。
これは年110万円の基礎控除とは別の取扱いです。条件を満たす生活費・教育費まで、110万円以内に収める必要はありません。
国税庁のQ&Aに沿って整理すると、次のようになります。
| 援助の内容 | 考え方 |
|---|---|
| 子・孫の学費、教材代、通学交通費など | 教育上通常必要な費用が対象。義務教育に限られません |
| 日常生活に必要な生活費や家賃 | 受け取る方の必要性、援助する方の資力などから判断します |
| 治療費や出産に伴う検診・入院費など | 保険金などで補てんされる部分を除くなどの確認が必要です |
| 将来の学費として数年分をまとめて渡す | 使わず預貯金になっている部分などは、原則として贈与税の課税対象です |
「通常必要かどうか」は、家族なら無条件に認められるものではなく、双方の事情を踏まえて判断します。
実務上は、学費の納付時期に合わせて支払うなど、使途と金額が分かる形にし、請求書や振込記録を残しておくと説明しやすくなります。
参考:国税庁「扶養義務者から生活費又は教育費の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」問1-1~1-3、問3-1、問4-1、問5-1
根拠:相続税法第21条の3第1項第2号、相続税法基本通達21の3-3~6など。
ご自身の生活に余裕がある範囲で、ご家族が必要としている時期に援助する。相続税を減らすことに加えて、財産をご家族のために役立てられる方法だと考えています。
亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、次の非課税枠があります。
500万円×法定相続人の数
妻と子2人が法定相続人であれば、非課税枠は合計1,500万円です。
例えば、対象となる死亡保険金を相続人が合計1,500万円受け取る場合、その保険金は非課税枠に収まります。預貯金には、この生命保険金の非課税枠はありません。
ただし、以下を確認してください。
まずは現在の契約を確認し、非課税枠をどの程度使っているかを調べましょう。新たな加入を検討する場合も、保険料の負担、途中解約時の条件、ご自身の生活資金を含めて判断することが大切です。
自宅の敷地などについては、一定の要件を満たすと、相続税の計算に使う土地の評価額を大きく減らせます。
主な区分は次のとおりです。
| 対象となる宅地等 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 自宅の敷地などの特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 店舗・工場などの特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 賃貸住宅などの貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
※それぞれ適用要件があります。複数の区分を併用する場合には、面積の調整が必要になることがあります。
例えば、自宅の敷地の評価額が2,000万円で、その全体に80%減額を適用できれば、相続税の計算上は400万円になります。
安曇野市で自宅や事業用の土地をお持ちの方にとって、確認しておきたい制度です。ただし、田畑そのものはこの特例の対象ではありません。
自宅についても、誰が相続するか、同居の状況、相続後の保有・居住などによって適用の可否が変わります。住民票を移すだけで適用できる制度ではありません。
また、特例を使って基礎控除以下になる場合でも、相続税の申告が必要です。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
財産を残すことだけでなく、財産を必要なことや、ご自身・ご家族の暮らしを豊かにすることに使うという考え方もあります。

屋根や外壁の補修、雨漏りの修理など、いずれ必要になる工事を、ご自身が元気なうちに行う方法です。
支払いによって預貯金が減り、相続税の対象財産が減る場合があります。ただし、増改築などで建物の価値が増えることもあるため、支出額と同じだけ財産評価が下がるとは限りません。
また、子どもが所有する建物の修理代を親が負担する場合などは、別途、贈与税の検討が必要です。
節税額だけで判断せず、工事の必要性や、その後も安心して住めるかを基準に考えましょう。
日常礼拝のための墓地・墓石・仏壇などは、原則として相続税がかかりません。そのため、もともと購入する予定がある場合には、生前に購入して代金を支払っておくことが対策になる場合があります。
ただし、投資対象や商品として所有するものなどは、非課税の対象になりません。
また、非課税となる墓石などの未払代金は、相続財産から債務として差し引けません。生前に契約だけして、支払いを残せばよいということではありません。
ご自身も参加する家族旅行や食事などに財産を使い、ご家族との思い出を作ることも、一つの選択肢です。
ただし、家族の旅行代なら、どのような金額でも贈与税がかからないわけではありません。 他のご家族の費用を負担する場合は、旅行の内容、金額、負担関係などに応じて確認が必要です。高額な旅行代や、旅行資金として渡す現金には特に注意しましょう。
家族旅行は、税金を減らすためだけに行うものではありません。ご自身も楽しめる、無理のない支出として考えていただきたいと思います。
そして、使ったお金の全額が、相続税の減少として戻ってくるわけではありません。 節税だけを理由に、不要な買い物をする必要はありません。
相続財産が1億円前後の方であれば、まず税額を試算し、既存の非課税枠や特例を確認することから始めましょう。
そのうえで、ご自身の生活費・医療費・介護費を十分に残し、生前贈与や生活費・教育費の援助などを検討します。納税資金の準備や、財産の分け方についても考えておくと安心です。
当事務所では、「安心・親切・丁寧」を大切に、相続税がかかるかどうかの確認から、ご事情に応じた対策の検討まで対応しています。
安曇野市などで相続税について気になることがありましたら、まずは現在の財産状況を整理するところからご相談ください。
※本記事は、2026年9月5日現在の法令・通達および国税庁の公表資料等に基づき、相続税対策の一般的な考え方と主な制度をご紹介するものです。今後の税制改正等により、取扱いが変わることがあります。
個別の税額や特例の適用は、財産の内容・評価額、相続人の構成、過去の贈与、居住・所有状況、申告や届出の有無などによって異なります。記載した試算は一定の前提に基づくものであり、同程度の財産をお持ちのすべての方に当てはまるものではありません。
贈与・保険契約・不動産の名義変更などを実行する際は、本記事のみで判断せず、事前に税務署または税理士に相談し、最新の制度と個別の適用条件をご確認ください。
安曇野市の相続・贈与・遺言なら寺坂誠税理士事務所・行政書士寺坂誠相続相談事務所
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