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安曇野市でも、親子や兄弟などの親族間で土地や建物を売買したいというケースがあります。
たとえば、
といった場合です。
こうしたとき、意外と難しいのが、
「いくらで売買すればよいのか」
という問題です。
特によくある考え方が、
「固定資産税評価額があるのだから、その金額で売買すればよいのでは?」
というものです。
しかし、これは注意が必要です。
固定資産税評価額は、親族間売買における「時価」そのものではありません。
固定資産税評価額だけを基準として、実際の市場価格より著しく低い金額で親族に売却してしまうと、買主側に贈与税の問題が生じる可能性があります。
親族間だからこそ、価格を何となく決めるのではなく、第三者にも説明できる根拠を残しておくことが大切です。
※以下は、原則として売主・買主とも個人である場合を前提に説明します。法人が売主または買主となる場合は、法人税・所得税・消費税など別の検討が必要になります。
親族間でも、不動産の売買価格そのものは当事者間で決めることができます。
しかし、税務上は、
「その売買価格が、通常の取引価額(時価)と比べて適正か」
という点が問題になります。
個人から著しく低い価額で財産を取得した場合には、時価と実際の売買価格との差額について、買主が売主から贈与を受けたものとみなされることがあります。
根拠となるのは相続税法第7条です。
たとえば、本来の時価が2,000万円程度と考えられる土地を、親から子へ500万円で売却した場合には、
「本当に500万円の売買でよいのか」
という問題が生じます。
差額部分について贈与税が課される可能性があるためです。
ここで重要なのは、
「時価の何%以上なら絶対に大丈夫」という一律の基準はない
ということです。
ときどき「時価の2分の1以上なら問題ない」という話も聞きますが、これは法人に対する低額譲渡に関する論点で、所得税法上の取扱いと混同されていることがあります。
個人間の親族売買について、「時価の50%以上なら贈与税はかからない」というルールがあるわけではありません。
不動産には、一つだけではなく複数の「価格」が存在します。
代表的なものには、次のようなものがあります。
実際に第三者間で売買される価格です。
親族間売買の時価を考える場合には、基本的にこの実際の市場価格を最も重視します。
国や都道府県が公表する土地価格です。
対象となる土地そのものの価格ではありませんが、近くに標準地・基準地があれば、時価を考える有力な参考資料になります。
相続税や贈与税の土地評価に使用される価格です。
相続税路線価は、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途として設定されています。
そのため、
相続税路線価 ÷ 0.8
として100%水準へ割り戻し、時価を概算する方法があります。
固定資産税を計算するための評価です。
土地の固定資産税評価については、地価公示価格等の70%程度を目途とする評価水準が採用されています。
そのため、
固定資産税路線価 ÷ 0.7
あるいは、
固定資産税評価額 ÷ 0.7
として、おおまかな時価を考えることがあります。
ここが大切なところです。
固定資産税評価額が時価の7割程度の水準を目途としているのであれば、
固定資産税評価額そのものを売買価格にしてしまうと、市場価格よりかなり低くなる可能性がある
ということです。
したがって、
「市役所が決めた金額だから、固定資産税評価額で売買すれば税務上も大丈夫」
とは限りません。
これは親族間売買でよくある勘違いです。
これも、少し注意が必要です。
相続税路線価を0.8で割った金額や、固定資産税評価額を0.7で割った金額は、時価を考える際の有用な参考資料になります。
しかし、
その計算結果が、その土地の正確な時価になるわけではありません。
土地の価格は、
など、さまざまな事情によって変わります。
安曇野市内でも、豊科・穂高・三郷・堀金・明科など地域によって状況は異なりますし、同じ地域でも接道条件や土地の形状によって市場価値は変わります。
したがって、
「路線価÷0.8だから、この金額」
「固定資産税評価額÷0.7だから、この金額」
と機械的に決めるのではなく、複数の資料を組み合わせて考えることが重要です。
親族間売買の土地価格を検討する場合、できるだけ複数の資料を確認することをおすすめします。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」などを利用すると、近隣で実際に取引された不動産価格を確認できます。
対象地と、
などが近い取引事例があれば、重要な参考資料になります。
通常の住宅地であれば、不動産会社による査定は非常に重要です。
可能であれば、2~3社程度から書面で査定を取得すると、価格の妥当性を説明しやすくなります。
査定価格に差がある場合には、
「なぜその価格になるのか」
という査定根拠まで確認するとよいでしょう。
近くに公示地価や基準地価の標準地点があれば参考になります。
ただし、対象土地との場所・形状・接道・面積などの違いがありますので、そのまま同じ価格を使うわけではありません。
先ほど説明したように、
といった金額も、時価の水準を確認する参考になります。
ただし、これだけで価格を決めるのではなく、実際の取引事例や不動産会社の査定と比較することが大切です。
高額な不動産や特殊な土地、複数の査定価格に大きな差があるケースでは、不動産鑑定士による鑑定評価を検討します。
費用はかかりますが、価格について争いが生じる可能性が高い場合には有力な方法です。
土地価格を調べる際には、一般財団法人資産評価システム研究センターの**「全国地価マップ」**も便利です。
全国地価マップでは、
などを地図上で確認できます。
親族間売買の価格を考える際には、一つの資料だけを見るのではなく、こうした公的資料を横断的に確認すると、価格水準を把握しやすくなります。
土地だけでなく、建物についても注意が必要です。
建物の固定資産税評価額や税務上の減価償却後の帳簿価額が、そのまま売買時価になるわけではありません。
建物の場合には、
などを考慮します。
新築・築浅住宅であれば建築費や取得価額が重要な参考になります。
一方、かなり古い住宅では、固定資産税評価額が残っていても、市場では建物自体にほとんど価値がつかない場合もあります。
中古住宅の場合には、不動産会社の査定や近隣の中古住宅の成約事例などを確認することが大切です。
土地と建物を一括して、
「合計2,000万円」
などとして売買することも多いと思います。
この場合でも、税務上は、
土地はいくら、建物はいくら
という内訳を合理的に決めておくことが重要です。
売主の譲渡所得の計算などに関係するケースもありますので、契約前に確認しておきましょう。
親族間の不動産売買では、売買価格以外にも確認しておきたい事項があります。
売主には、不動産の売却益について所得税・復興特別所得税・住民税が課税される場合があります。
取得費、譲渡費用、所有期間などを確認します。
著しく低い金額で不動産を取得すると、時価との差額について贈与税が課税される可能性があります。
これが親族間売買において特に注意したい点です。
マイホームを売却した場合には、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。
ただし、親子や夫婦など一定の特別な関係にある人への売却では、この特例を利用できない場合があります。
「親族への売却だから必ず使えない」というわけではありませんが、売主と買主の関係を確認する必要があります。
買主が住宅ローン控除を利用する場合も注意が必要です。
取得時および取得後も引き続き生計を一にする親族等から取得した住宅については、住宅ローン控除の対象外となります。
また、親族や知人から借りたお金は、原則として住宅ローン控除の対象となる借入金にはなりません。
「親から土地を買い、その購入資金も親から借りる」
というケースもあります。
親族からお金を借りたこと自体が、直ちに贈与になるわけではありません。
ただし、本当に貸し借りをしたことが分かるようにしておくことが重要です。
たとえば、
といった対応が必要です。
「ある時払いでよい」
「返せるときに返せばよい」
というような内容では、実質的な贈与ではないかと問題になる可能性があります。
親族間の不動産売買で、後から一番困るのは、
「なぜこの金額で売買したのですか?」
と聞かれたときに説明できないことです。
そのため、売買時には、
などをまとめて保存しておくことをおすすめします。
税務署に説明するためだけではありません。
後々、親族間で、
「安く売りすぎたのではないか」
「本当は贈与だったのではないか」
といったトラブルが起きることを防ぐ意味でも重要です。
実際には、次のような順番で進めると分かりやすいと思います。
誰から誰へ売却するのか、売買の目的、不動産の現況、資金調達方法などを確認します。
取引事例、不動産会社の査定、公示地価、路線価、固定資産税評価額などを確認します。
一つの数字だけで決めず、複数の資料とその不動産固有の事情を考慮します。
売主の譲渡所得税、買主の贈与税リスク、住宅関係の特例などを確認します。
不動産売買契約書を作成し、売買代金は原則として銀行振込など、記録が残る方法で授受します。
査定書・価格資料・契約書・振込記録・登記書類などは一式保存しておきます。
親族間の不動産売買では、
「親族だから、だいたいこのくらいでよいだろう」
と価格を決めてしまわないことが大切です。
特に、
「固定資産税評価額で売れば問題ない」
という考え方には注意してください。
固定資産税評価額は、時価を考えるための重要な参考資料の一つですが、時価そのものではありません。
また、
という計算も、時価の概算には役立ちますが、その金額だけで売買価格を決定することはおすすめできません。
近隣の取引事例、不動産会社の査定、公的な土地価格、不動産固有の事情などを総合的に確認し、第三者にも説明できる価格を決めることが大切です。
親族間だからこそ、売買するときにはきちんと手続きを行い、価格の根拠も残しておく。
それが、ご家族間の将来のトラブルを防ぎ、税務上も安心して取引を進めることにつながります。
安曇野市では、売却しようとする土地に固定資産税路線価が付されていないことや、付近に参考となる売買実例が見当たらないことも少なくありません。
また、不動産会社から提示された査定額と、
固定資産税路線価や固定資産税評価額を0.7で割り戻して計算した価格
との間に、大きな差が生じることもあります。
このような場合には、そもそも参考にできる価格資料が限られているため、
「この価格であれば100%税務上問題ありません」
と断定できる価格をご提示することは、私にもできません。
ただし、
などを総合的に確認したうえで、どの程度の価格であれば合理的に説明できるか、税務上どのようなリスクが考えられるかについてアドバイスすることは可能です。
親族間の不動産売買では、必ずしも「一つの正解となる価格」が見つかるとは限りません。
だからこそ、利用できる資料を一つずつ確認し、価格を決めた理由を説明できるようにしておくことが大切です。
安曇野市で親族間の土地・建物の売買価格にお困りの場合には、お気軽にお声がけください。
寺坂誠税理士事務所では、親族間の不動産売買について、
など、税務面を中心に一つずつ確認しながら、親切・丁寧に対応しています。
不動産は金額が大きいため、契約・登記をしてしまった後では修正が難しいことがあります。
「この価格で売買して大丈夫だろうか」
と少しでも気になる場合には、売買契約をする前にご相談ください。
本記事は、2026年8月16日現在の法令・通達・国税庁公表資料等に基づき、親族間の不動産売買について一般的な考え方を分かりやすくまとめたものです。
法令・通達等の改正、個別の事実関係、当事者間の関係、対象不動産の状況、契約内容等により、本記事と異なる取扱いとなる場合があります。
実際に売買を行う際は、契約や登記を実行する前に、必ず個別の事実関係に基づいて税務・法務上の取扱いをご確認ください。